ENTRY

福祉の壁を、焼きたての笑顔でこわしたい。

たこ焼きから始まる「地域とつながる福祉」のプロジェクトストーリー
代表 胡谷俊樹を中心に対談に参加した男女の職員が左右2名ずついる写真
胡谷俊樹さん
おうじグループ 代表・医師
胡谷俊樹さん

地域医療と福祉の境界を越える挑戦を続けるおうじグループの代表。現場への深い理解と行動力を武器に「たこ焼き屋」など型破りな発想を次々と実行。医師としての枠にとどまらず「街の課題は、自分たちで解決する」という覚悟で福祉の未来を切り拓くトップランナー。

河村康秀さん
エンゼル 管理者・サービス管理責任者
元たこ焼き職人
河村康秀さん

異色の経歴を持つ現場のリーダー。過去に本格的なたこ焼き屋を営んだ経験を活かし、今回のプロジェクトでは焼きの監修も担う。利用者・職員との距離が近く、飄々とした人柄で場を和ませる一方、福祉の未来と人づくりに熱い情熱を燃やすベテラン管理者。

谷口弘枝さん
十王堂おうじ ケアマネジャー
谷口弘枝さん

日々利用者と向き合いながら、地域のあたりまえを丁寧に支えるケアマネジャー。多職種連携の要として信頼が厚く、理事長から何を振られても柔軟に対応する。たこ焼きプロジェクトでは、率先して勉強会を開いて意見を交わす。現場の声を聞いてアイデアに落とし込む。

服部修忠さん
ベネヴィータ王慈 調理員
服部修忠さん

普段は福祉施設での食事づくりを担いながら「食」を通じた喜びを大切にしてきた調理のプロ。たこ焼きプロジェクトでは素材や焼き加減にこだわりながら、みんなで食べて楽しい時間を創り出す仕掛け人。笑顔を引き出す料理人として裏方からプロジェクトを支える。

小野万郁さん
王慈園 管理栄養士
小野万郁さん

利用者一人ひとりの状態に寄り添った献立づくりを実践し、現場との連携を何より大切にする管理栄養士。栄養バランスとおいしさの両立にこだわり、たこ焼きにも福祉食としての工夫を込めることを提案。プロジェクトでは健康と楽しさの両立を担うキーパーソン。

福祉目線では、地域とつながれない。 たこ焼きの旗を立てたらどうだろう。

はじまりは地域貢献のための企画だった。しかし、理事長には拭い去れない違和感があった。
「地域貢献って言葉だと、どうしても福祉側から見た貢献になってしまうんです」
イベントも、講演も、ボランティアも、どれも間違いではない。けれど、そこにはしてあげる側と、される側という無意識の境界線が残る。
「その壁を壊すには、もっと自然にもっとフラットに、人が集まれる何かが必要だと思ったんです」
そんな時、ふと頭に浮かんだのが、どこかで見かけた「たこ焼き屋」の旗だったという。
「これ、十王堂おうじの前に立ててあったら、ちょっと面白いかも」
唐突に見えるその発想も、実は地域との「接点」づくりを真剣に考え抜いた末の答えだった。たこ焼きは、誰でも立ち寄りたくなる入り口になるかもしれない。ならばやってみよう。すべてはその小さな思いつきから始まったのだ。そして何より「たこ焼きなら、きっと笑顔が集まる」そんな直感に、理屈以上の確信があった。子どもも、大人も、高齢者も、ひとつの屋台を囲んで笑い合う。そんな風景が鮮明に想像できた。
福祉だからできない、じゃない。福祉だからこそ、おうじだからこそ、やる意味がある。そう信じて理事長は「たこ焼き屋をやるぞ」と本気で言ったのだ。

ジェスチャーをしながら話す胡谷俊樹さんと谷口弘枝さん

「たこ焼きって、なんですか?」 最初の戸惑いが、職員の学びに変わった日。

ジェスチャーをしながら話す河村康秀さんと小野万郁さん

突然、たこ焼き屋をやる!と理事長から聞いた職員たちは、正直なところ困惑したという。ケアマネジャーの谷口さんは、会議に呼ばれ「たこ焼き?なにそれ?」と戸惑った。管理栄養士の小野さんも「たこ焼きをどうするんだろう」と考え込んだ。
谷口さんは、レクリエーションで、たこ焼きについてみんなに聞いてみた。
「でも話し合ってみると、面白くて。じゃあ地元のねぎを入れてみてみようかとか、どんどん意見が出る。気づいたらホワイトボードに『たこ焼きの重要度』と真面目に書いてました(笑)」
調理員の服部さんも、やれやれ「また来たな」と慣れてるかのように言う。それでも「どうせやるなら楽しく」が彼の信条。「魚介入れたいって提案したけど、アレルギーとかお腹にくるからNG。でもそういう制限の中で、どう組み合わせるか考えるのが好きなんですよね」
河村さんは、かつてたこ焼き店を営んだ経験を持つベテランだ。
「福祉でやってるたこ焼き屋って構えると、地域の人が入りづらくなる。境界を感じさせない場所じゃないと意味がないんです」彼は、福祉の枠組みに縛られない感覚を誰よりも知っている。
「外から来る人が、街のたこ焼き屋だって思えるような雰囲気づくりが大事なんです」
彼らの言葉の奥には、やらされてるのではなく、本気で向き合ってる空気が流れていた。職員の肩書きを超えて「面白いことを一緒にやってる仲間」としてプロジェクトに関わっているのだ。

たこ焼きで「通いたくなる場所」をつくる。 人と人のつながりが生まれる食卓へ。

「たこ焼きだからといって、僕たちは味ナンバーワンを目指してるわけじゃないんです」
理事長のこの言葉に、プロジェクトの本質が詰まっている。
「うちの野菜が入ってるから食べに行こうよ」「今日、おうじでたこ焼き焼いてるらしいよ」そんな何気ない声が、地域の人たちの間に自然と広がっていくような通いたくなる場所をつくりたい。その第一歩がたこ焼きで、他のプロジェクトも構想中なのだ。
谷口さんは言う。「高齢者の方って、なかなか買い物にも行けないし、車も運転できない。そうなるとお弁当の配食サービスをとるしかなくて、それが冷えてしまっていても「しょうがないんだよ」って食べてるんですよ。でもたこ焼きなら温めて食べられるし、持って行ってあげることもできるんです」
服部さんも共感する。「1パックだけでも買いに来てもらえたら、それが会話のきっかけになる。「今日はどう?」って声をかける理由がそこに生まれますよね」
その発想は、地域に住む高齢者に「食」を届けるだけでなく「関係」もつくる。
聞けば聞くほど、おうじグループが手掛けるたこ焼きは、ただの食べ物じゃないことがわかる。誰かと誰かの間に、あたたかい会話とつながりを生む「ツール」なのだ。小さな丸いたこ焼きのひとつひとつに、地域の未来を変える力が込められている。

話をしている谷口弘枝さんと服部修忠さんと小野万郁さん
対談参加者のモノクロ写真

福祉の正しさより、まず楽しさを。 笑顔を引き出す「仕掛け」を全方位で。

笑顔の服部修忠さんとジェスチャーをしながら話す河村康秀さん

実は、進んでいるプロジェクトは、たこ焼きだけじゃない。
服部さんは、理事長の号令で「はちみつプロジェクト」にも乗り出していた。「理事長から『蜂、飼ってみない?』って言われて。最初はびっくりしたけど、でもね、やってみると面白い。蜜を絞る体験とか、絶対子供たち喜びますよ」それをきっかけに、職員たちの間でも「次はこんなことできないかな?」とアイデアが飛び交い始めたという。
河村さんは言う。「蜂って刺されたら怖いってイメージがあるけど、蜂蜜として触れたらそれだけで新しい世界が広がる。そこから福祉に興味を持ってもらえるかもしれない。いきなり”介護の”じゃなくて、美味しいものから関わってもらえるってすごくいいことですよね」
小野さんも、食の力を信じている。「ご飯を楽しみにしてくれる方が多くて、本当にうれしいんです。外の世界との接点が少ない高齢の方にも、旬の食材や盛り付けの工夫で「あ、春だな」「秋になったな」って感じていただける。たこ焼きも移りゆく季節を感じられる味にできるといいですよね」
福祉施設という「内側」からだけではなく、食・体験・会話といった五感を通じて「街」とつながる。それこそが、おうじグループが考える「地域福祉の進化形」であり、たこ焼きも、はちみつも、そのきっかけづくりに過ぎない。仕掛ける福祉の姿が、ここには確かにある。

「おうじが、また何か始めたらしいよ」 そう言われるくらいが、ちょうどいい。

新しいことを始めるのは、大変だ。予算も、ルールも、調整も、たくさん乗り越えることがある。でも、おうじグループの職員たちは、そんな困難すら笑い飛ばす。
服部さんはにこやかに語る。「やらされてる感がないんですよね。楽しいからやる。こけても、笑えばいいだけですから。むしろ失敗できる余白があることって、すごく大事だと思うんです」その姿勢が周囲に伝染して、職場には「とりあえずやってみよう!」の空気が出来上がっているという。
河村さんは、理事長から突然イラストを頼まれたエピソードを話してくれた。
「河村さん、描けますよね?って(笑)。でも負荷がかかるからこそ、燃える。誰かがやるべきなら、自分が一番にやろうって思える。それに、結果が出たときの達成感は格別なんです」
最後に理事長がしめくくってくれた。「楽しいか、楽しくないか。それだけが判断基準です。地域の人たちと一緒に笑って、考えた時間があれば、たとえ失敗しても意味はあるし、財産になる。成功よりも、その過程にある共有された熱量が大事なんです」
「真面目な福祉」じゃなくていい。もっと無邪気に、もっと自由に。やりたいことをやればいい。たこ焼きでも、はちみつでも、イラストでも何でもいい。ちょっと変で、でも本気。らしくない取り組みの中にこそ、これからの医療・福祉の可能性がある。そんなふうに思えてならない。

笑顔の小野万郁さんと笑顔の胡谷俊樹さん
正面を向いている対談参加者のモノクロ集合写真
その他のプロジェクトストーリー
PRJECT SOTRY 02のバナー画像
読むほどにオモロい!おうじのメディア OHJIN
CLICK HERE!